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この場面ながら、今日一番、もっとも鋭くカーブの内角をえぐった。最高のコース取りだ。
まるで、風に乗ったかのような身軽さがあった。
良い雰囲気のまま、驚くくらいスムーズに最初のカーブを突破した。
それを保ちながら、感覚は同じままで次の左へ。
こちらもいい具合に進入できた。
ベストではないにしろ、ある程度ベターな手応えを掴んだ。
大丈夫――さきほどのベストを経験しているので、そんな気持ちになったのだ。
リーサの心臓は高鳴りを初めていた。背後の敵を確認することすら忘れてしまっていた。
このまま自分の走りを最後まで貫けば、間違いないなく逃げ切れるという、確信を覚えようとしていた。
自分がこれから行くべき道を、リーサは見つめた。
そこに“悪魔の曲線”がどっしりと待ち構えている。
もはや今の最大の敵は、他のマシンではなく、このコースだ。
本当に自分を信じきれた時に、こんな境地にたっするのだろうと、リーサは推測した。
そんなことを思っているうちに、敵はもう目の前だった。
ここを越えさえすれば――。
リーサは、最後の大勝負をするべく、ハンドルを一気に右へ旋回させた。
重力が身体全体に襲いかかる。
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