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なぜ、選択を誤ってしまったんだろう?
以来、何度もそういった不本意な気持ちに惑わされてきた。
過ぎ去ってしまった事象を悔やんでしまうのは、悪い時のリーサの象徴といえた。
でも、それでも、わかっていても、この感情は止められないものだった。
今はまさにあのときと同じだ。
これがリーサの、根からの本来の性格なのかもしれない。
せっかく変わったと思っていたのに――。
リーサは腕は、力なくハンドルから滑り落ちた。
その時だった。頭の真横から、どんどんと窓を叩く音がして、リーサははっとした。
透明なガラスの向こうに、幾分緊張したフランの顔があった。
リーサは、ドアの側面にあるレバーを回転させて、ふたりの空間を遮断する壁を取り去った。
「リーサ。大丈夫か?」
よほど深刻そうな顔をしていたのか、彼は即座にそういった。
大丈夫だよ、とリーサは応えた。
それから、大会で優勝できなかったことを詫びようとした。
しかし、一歩早くフランのほうが口を開いた。
「さあ、戻ろうぜ。すぐに表彰式だ。リーサは表彰台を取れたんだぜ?」
たしかに、三着までは表彰されるのがこの手のレースの定番だ。
ただ、ふたりが目指していたのはあくまで優勝であり、リーサは手放しに喜ぶ気にはなれなかった。
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