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「ごめん……」
「なんで謝るんだよ」
フランは、少し怒ったような口調だった。それに反応して、自然にリーサの顔が彼に向いた。
「いっとくけどな、もしも俺がドライバーだったら、最下位まっしぐらだったんだぜ」
内容は全然誇れるものではないのに、なぜか自信に満ちているようにすら見える。
リーサは思わず笑ってしまった。
暗い気持ちが、どこかへ飛んで行ってしまった。
「自慢することじゃないし」
リーサは、フランが望んでいるであろう相槌を返した。
彼も白い歯を覗かせた。
それから、歩いて助手席側に回り、ドアを開けてリーサの隣に腰かけた。
「さあ、戻ろう。表彰だ」
「うん」
リーサは、ゆっくりとゼファーを発進させた。ここで初めて、昼間の眩しい陽射しが路面を照らしていることに気がついた。
それはまるで、ふたりの行く先を示してくれるかのように、コース一面へ光を注いでいた。
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