第3章 EPISODE Liisa

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――― 「えっ、ゼファーをわたしに?」 それを聴いた時、リーサは何がなんだかわからないような気持ちになった。 「そうだよ。やっぱり、コイツはコイツをちゃんと操れるやつに乗ってもらいたいからな。ゼファーもそのほうが喜ぶよ」 フランは真顔でそういうのだ。 しかしリーサとしては、やはり瞬時に、これを彼の真意と捉えることはできなかった。 ゼファーが喜ぶ――その思想は理解できるのだが、本当にそれが本音なのかと、うたぐりたくなるのだ。 そもそも、リーサが大会に出たのも、フランと協力して魔力の研究をしたのも、このゼファーを世界に広めるためだった。 なのに、フランはゼファーをリーサに譲ると申し出たのだ。 大会の日からは、すでに二日が経過していた。 表彰台に乗った経験は、リーサにとっても気分の良いものだったが、それはもう行ってしまった過去なのだ。 フランからの、この提案があったのは、そろそろ次の目標を決めないと、と思っていた矢先のことだった。 「フランの夢は?ゼファーを世界に広めて、また作れるようにするんじゃないの?」 「広める目的なら、もう十分に達成できたさ」 フランは自信ありげだ。 「あのレースでな」 「本当に?……でも、わたしは優勝できなかったし」 あの表彰式で、赤いマシンのドライバーが歓声を浴びていたのを、リーサは真横で聴いていた。
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