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「そして、決定的なポイントはリーサは女性であることだ。女性ドライバーは、それだけで注目の的になる。例えば、予定通りに俺が参加していたと考えると、やっぱりあんなふうにサマになったりはしなかったと思うんだ」
「うーん。なんだか、それだけたくさん並べられると、本当にそんな気がしてきたよ」
「必ずしも勝った者が得をするわけじゃないんだぜ。特に宣伝なんてのはな。なるべく多くの人の目について、それでいて何か心に響くインパクトがないといけない」
業界人としてのフランは、リーサなどよりもずっと、物を売ることに精通しているらしい。
もしかすると、リーサがドライバーを務めると決まった瞬間から、その青写真を描いていたのかもしれない。
「とにかく、宣伝は十分にできたっていうわけね」
「ああ、そういうこと。俺はこれから、一般民向けのマシンを開発していきたいと思う。このゼファーを手本にしてな」
たしかにゼファーには、騒音や燃料など、売り物にするにはまだまだ解決すべき問題が残されているのだ。
「だから、これは俺からの恩返し――いや、俺の気持ちだ。それに、リーサはいつか外にでるんだろ。その時に移動手段がないのは厳しいぜ」
たしかに、時がくればそんな日がくるかもしれない。
しかし、即座にそれを肯定するのは気が引けるため、リーサは咄嗟に苦笑いをしていた。
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