第3章 EPISODE Liisa

104/117
前へ
/388ページ
次へ
――― フランからゼファーを譲り受けたその日から、リーサはフェルムランド国外に出ることを夢見始めた。 もちろん、それでフランとはお別れ、などとは考えていなかった。 フェルムランドを拠点として、少しの間だけでも、外の世界を眺めてみたいと思った。 そうして、時々はフランのところへ帰ってくる。待ってくれている人と、帰ることのできる場所があることは幸せなことなのだ。 リーサは、ある意味初めてそれを知った。ホープ時代にも得ることのなかった感覚だ。 彼らもとても良くしてくれていたが、あの時は仕事仲間という感覚を拭うことができなかった。 思えばフランとは、出会いは軽いものという違いはあったが、始まりは仕事からだった。 しかしいつしか、仕事とは別の意味でも彼を必要とするようになっていたのだ。 プライベートな時間を、長くともにしているという理由もあるかもしれない。 フランは、リーサを快く受け入れてくれた。そして、どんな話でも聴いてくれた。 時々リーサが後ろ向きな気持ちになった際にも、フランは明るく励ましてくれたのだった。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加