298人が本棚に入れています
本棚に追加
―――
「何笑ってんだよ。今はちょっといい雰囲気になるところだろ」
フランが少し拗ねている。
「ごめんごめん」
リーサは掌を合わせた。
「フランと出会った時のことを思い出したの。なんだか不思議だなって感じ」
それから、この一年半で、たくさんの新鮮な経験をした。
フランは最初首を傾げたが、そのうち笑顔になった。
「出会った頃かあ。懐かしいな。リーサは変わったよな、あの頃に比べると」
フランは、大袈裟なくらいに大きく頷いた。
「変わったのかな」
リーサはあえてとぼけてみたが、最終的には彼を立てておくことにした。
「ま、ちょっとは変わったかもね」
「そうだよ。変わったさ。それから、俺だって変わった」
「あんたはずっとそんな調子じゃない」
フランがくちびるを尖らせる。
「なんだよー。前よりはだいぶ真面目になっただろー。ほら、大人になったっていうかさ……」
「はい、はい」
「つれないな。今日は別れの日だっていうのにさ」
フランがしんみりとそういったため、リーサは必然的に別れを意識することとなった。
最初のコメントを投稿しよう!