第3章 EPISODE Liisa

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リーサはふと車の外を見た。 フェルムランドの埠頭は、街灯のおかげで、夜でも一定の明るさを保っていた。 世界を食べ尽くすような暗がりに、橙色のライトの光がぼんやりと広がっている。 ふたりは今、フェルムランドからファビュール本土へと渡る客船の最終便を待っているのだった。 その最終便が出港するまでは、あと三十分といったところだ。 同時にそれは、ふたりのしばしの別れの時間でもある。 「そろそろ行こうかな」 いつかはいい出さないといけない台詞だった。でないと、どうにも名残惜しさが払拭できなさそうだったからだ。 「まあ、もうちょっとだけ、ゆっくりしようぜ。別に……ほら、急いでなんてないんだろ」 急に、フランは真面目な口調に変わった。緊張している時のような、リーサの胸のうちを探るような声音だった。 「うん……そうだね」 たっぷり時間を空けてから、リーサはそう答えた。 名残惜しいのは、フランのほうも一緒のようだった。ふと、その意味を考えてみる。 彼はなぜ、自分との別れを惜しんでくれるのだろう。 そこにはどんな感情があるのだろう。
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