第3章 EPISODE Liisa

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無論、リーサが彼の気持ちについて、何ひとつわかっていないなどということはなかった。 いつかふたりで食事をした、あの時のフランの行動にも、彼の思念の小さな一端を垣間見たのだった。 そして、それを断ったのはリーサのほうだ。 そのせいで、彼は自分の感情にブレーキをかけているのかもしれなかった。 ならば、次はリーサのほうから、というのが筋のような気もする。 要するに、ふたりの感情に、ある程度の結論はすでに出ているといえた。 しかし、その内容をはっきりと口にする勇気が、リーサにはなかった。 後ろ向きな思考からは脱しても、この特別な恐怖心だけは、簡単に払拭することはできないのだ。 もしも、勘違いだったら――。 フランにとってわたしなんてなんでもない存在だったら――そんな不安がよぎる。 「なあ、リーサ。俺と出会ってよかったと思ってるか」 唐突に、呟くようにフランがいって、リーサは彼のほうを見た。 彼は窓の外側へ顔を向けていた。その奥には、黒く光る海辺が見える。 「思ってるよ。なんでそんなこと訊くの?」 たっぷりと三秒くらい、沈黙の時間が発生した。 そしてフランがこちらを向いた。
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