第3章 EPISODE Liisa

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「ううん、いや、別に……いいんだ……」 彼はそのまま目を伏せた。 リーサも、彼のほうから目を外そうとした。 「いや」 いきなり出た大きな声を聞き、リーサの身体はぴくりと反応した。 「よくない」 「え?」 リーサが彼のほうを向くのとほぼ同時に、フランの左の掌がリーサの右肩を掴んだ。 ふたりは、互いに見つめ合うようなかたちになった。 そして、彼の決意のこもった瞳をしっかりと見た。 咄嗟に、恥ずかしさからリーサは目を逸らしたかったが、直感的にそれを躊躇した。 今ここで逃げてしまえば、もう永遠に、彼との距離は近づかないような気がしたからだ。 「リーサ、俺……」 フランの右腕が、リーサの身体の左側から背中に回った。 そのまま、彼に引き寄せられる。 座席と座席の間にある、ギアのチェンジがふたりの邪魔をしたが、そんなことはまったく気にならなかった。 リーサの身体は、まったく動かなくなっていた。 彼の胸板に、同じくリーサの胸がぶつかった。
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