第3章 EPISODE Liisa

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その状態のまま、ずいぶんと長い時間が過ぎたような気がした。 気づけば、くちびるから感触は消えていて、彼の温もりも幾分遠ざかっていた。 ただ、両腕はリーサの身体を包んだままだった。 リーサが目を開けたとき、すぐ触れるほどの先に彼の顔があった。 気恥ずかしくなって、必然的に目を伏せた。 「リーサ」 くすぐったくなるような甘い声で呼ばれた。 「今日は、さすがにもう、いいだろ?」 その言葉の意味を、リーサの頭はすぐに察知した。 さらにフランの腕が、いくらか力を増したような気がした。緊張感が一気に増した。 「あっ、でも……それは……」 リーサは何とも言葉では表しがたい、熱く高揚した気持ちになった。 すると彼のほうも、なぜかあたふたし始めた。 ぱっと、腕を解いてリーサを解放した。 「あ、ち、違うよ。今日の出発のことだよ」 まるで、時間が止まったかのような空間が車内に広がった。 「そうだね……明日でも……いいのかな」 この、宙に浮いたような今の気持ちのままで、毅然とさよならをいえるほど、大人ではなかったようだ。 リーサは初めて、その自分を知った。
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