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「今、何だと思ったんだ?」
フランは、興味津々というように口を開いたが、相反して言葉に抑揚はなかった。
「……何でもないよ。別に……」
そういうしかなかった。
「もう、やめようぜ、そういうの」
「えっ」
「そうやってさ、お互いに心の内を隠し続けるのは。リーサだって、ほら……なんていうんだろう――俺が今何を思ってるのか、わかってるんだろ?」
リーサは一瞬だけ考えたが、その後すぐに、彼のいう通りだと結論を出した。
リーサ自身にも、いまさら彼を気持ちを拒む理由などなかったからだ。
「うん……わかってる」
「ならさあ」
再び彼の身体が擦り寄ってくる。
「ちょっと、待ってよ」
リーサは制止したが、効果はあまりなかった。
彼の腕が、するするとリーサの身体に迫ってくるのだ。
リーサもそれを邪魔しようと腕を絡めたが、さらにその隙間を縫うように、フランは腕を進行させてくる。
ついには、またさっきのように、彼に抱きすくめられるようなかたちになった。
彼の体温を感じ、さらには心臓の鼓動が伝わってきたような気がした。
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