第3章 EPISODE Liisa

117/117
前へ
/388ページ
次へ
「ごめん……。ごめん」 目に見えてフランはしょんぼりとしてしまった。 「急にそんな……意気消沈されても困るけどさ……」 リーサはどうにもばつが悪く、気づけば窓の外へ目を向けていた。 そのとき、例の最終便がちょうど汽笛を鳴らした。いわば出港の合図だ。 「……船は出たし、移動しよっか」 リーサはそっと、呟くように提案した。 「……どこへ?」 フランは詮索するような顔だ。 「さあ、それは、フランに任せようかな……」 リーサはわざと、そっぽを向きながらいった。 そうして、彼が今どんな表情をしているのか、こっそりと想像してみた。 きっと、良くいえば嬉しそうな――つまりはイヤラシイ表情をしているのだと、リーサは思った。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加