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「ごめん……。ごめん」
目に見えてフランはしょんぼりとしてしまった。
「急にそんな……意気消沈されても困るけどさ……」
リーサはどうにもばつが悪く、気づけば窓の外へ目を向けていた。
そのとき、例の最終便がちょうど汽笛を鳴らした。いわば出港の合図だ。
「……船は出たし、移動しよっか」
リーサはそっと、呟くように提案した。
「……どこへ?」
フランは詮索するような顔だ。
「さあ、それは、フランに任せようかな……」
リーサはわざと、そっぽを向きながらいった。
そうして、彼が今どんな表情をしているのか、こっそりと想像してみた。
きっと、良くいえば嬉しそうな――つまりはイヤラシイ表情をしているのだと、リーサは思った。
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