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光を浴びた剣の先が、しなやかに伸びる雑多な植物の身を扇いだ。
そして、それらは程なくして元のしゃんとした姿に戻る。
そう、まるで風に吹かれたときのように。
「なかなか、初めのころに比べると、剣筋がよくなったみたいだね」
剣を振るうのをやめ、顔を上げて声の方向を見た。
少し離れた場所で、草原の中にぽつりと置かれている岩が目についた。
その上に、スーツ姿のフェリックスは腰掛けているのだ。
片方の膝を立てていて、余裕のポーズともいえる体制をとっている。
「そうですか?でも、まだ今のままじゃダメみたいです」
さらに熟練されていけば、さきほどの剣先は植物の身を扇ぐのではなく、真っ二つにしていたことだろう。
残念ながら、怜人の実力はいまだそのレベルには至っていないというわけだ。
「そんなに焦ることはないさ。日々の鍛練が一番の上達への近道なんだからな。もちろん、毎日続けることが条件ではあるけど」
「でも、この修行の旅を始めてから、もう一年以上が経ちますからね……」
つまりは、ドラクロスを離れてから一年というわけだ。
そう考えると、怜人の成長は遅いくらいかもしれなかった。
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