298人が本棚に入れています
本棚に追加
―――
フェリックスの運転に揺られること約三十分程度。ふたりは、目的地に定めていた街に到着した。
この街には、サラナダという名が付けられている。
程よく発展しており、拠点とするにはもってこいの場所だといえた。
大陸の位置でいうと、ここはグロスブルグの南にあたる。
ここには彼らによる侵略の手は及んでいないが、もしも再び戦争が起ころうものなら、優先的に狙われることになりそうな、そんな微妙な地帯に栄えている街だった。
怜人たちは今、そんなふうにグロスブルグの外周をなぞるようにして北上を続けていた。
にもかかわらず、一年の時が過ぎてしまった理由は、定期的に拠点を決めて、そこにしばらく滞在するという手法を取っていたからだ。
滞在する目的としては、一番は怜人の修行のため。次点として、フェリックスの個人的な趣味もあるのだろう。
彼は前々から、自由な生活を望んでいたのだから。
そんなフェリックスのやり方に合わせることに、怜人は特に不満はなかった。
今でこそ、戦闘能力にある程度の進歩がみられるが、中途半端な状態でグロスブルグに潜入するのは、危険だとわかっていたからだ。
最初のコメントを投稿しよう!