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初めての自立に、当初はとても戸惑った。
母校のドラクロスでは、国王に仕える一族として、何不自由のない生活をしてきたからだ。
クロード=ドラクール――そのドラクールとは、ドラクロスで第二の地位を有する一族なのだった。
しかし、クロードとしては、その地位のありがたみを感じたことなど、これまでの人生ではあまりなかった。
それどころか、このしがらみが不満でさえあった。
誇り高き一族の血を持つがゆえに、幼い頃から必要以上の教養と礼儀、その他諸々の秩序を叩き込まれてきたからだ。
何度、一般市民を羨ましいと思ったことだろう。ときには逃げ出したいと考えたりもした。
しかしそれは、やはりただのわがままだったようだ。
国を出てすぐに、クロードはそれを思い知らされた。
誰の助けも借りず、ひとりで暮らしていくというのは、簡単ではなかった。
起こった問題への解決策は、すべて自分自身で導きださなければならないのだから。
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