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―――
クロードは森の中にいた。
視界は、ひどくぼんやりとしている。
そう、まるで、あの“蒼眼”を使っている時のように。
いや、まさにそうなのだろう。
蒼眼を発動している間は、魔力をより集中的に視覚で捉えるため、それ以外の風景がモノクロのように変わってしまうのだ。
ある意味、副作用ともいえる効果である。
まさに今、目の前はそんなふうに見える。
それよりも、だ。
この能力はもう使わないと決めたはずだった。なのに、なぜ――。
一瞬クロードの脳裏にそんな思念が浮かんだ。
それと同時に、目の前に、小さな女の子が立っていることに気づいた。それとも、たった今この瞬間に彼女は現れたのだろうか。
しかし、そんなことは物理的にありえない。
そこにいたのは、背のたけこそクロードの肩口ほどだが、クロードよりも年下の、まだ大人の女性とはいいがたい容姿の女の子だった。
やがて、彼女の姿が、だんだんとはっきりした形を帯びてきた。
霞んでいた表情が見え始める――。
その瞬間、どくりと心臓が跳ね、胸のあたりに重いものが広がった。
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