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今日は週に一度の山を下りる日だ。
本当はもっと町の皆と触れ合いをもってもらいたいのだが、そういうわけにもいかない。何せ、アルバック家にはお金がない上に、家族全員が魔力持ちときている。アニーやジルが何の拍子に魔法を発動させて人を傷付けるか分からない。
そもそも魔力を持って生まれてくる子供は、約二百万人に一人と言われている。この国の人口は二億人。つまり、約百人が魔力持ちなのだ。
そして、魔力を自由自在に扱えるものを『魔法使い』と人は称する。
この国にいる魔法使いの大半は、国王ーーウィリアム・ミルナード・ジュリム家に使えている。残りの大多数は、貴族という位について人生を横臥しているのだ。
しかし、これすべてに該当していないアルバック家は、死ぬか生きるかとはいかないまでもギリギリの生活を送っていた。
アニーやジル、それにエデを学び舎に通わしたいのがシリルの本音であった。だが、どこでも金とは付きまとってくる。
以前に、学び舎の学費を見た時は、開いた口が塞がらなかったのを覚えている。
「なあなあ、兄貴。今度また魔力の使い方を教えてくれよ」
ジルの呼びかけにシリルは我に返った。あれこれ考えている間に、シリルたちは山の中腹辺りまで降りてきていた。
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