第一話 だから『彼女』を護衛する

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 それから約十分くらいして程なく、賑々しい声が聞こえてくる。  木で囲まれていた道が開け、大きな通りに出た。石造りの町には、道に沿っていくつもの露店が並んでいる。どこからか、お肉の焼ける良い匂いが鼻腔を擽りお腹の虫がなる。  シリルの隣でもこの光景に目を奪われた二人が、うわぁと歓声を上げている。やっぱり、一週間振りに来たのが効果あったようだ。  それにしても、いつ来てもここは騒がしいな。忙しなく行き交う人々を遠目にシリルは思った。 「ほらっ起きて、町に着いたよ」  体を上下に揺らして、アニーを起こす。ふにゅ、と寝ぼけた声を出して目を擦り一旦辺りを見渡す。 「わぁ~、シリル兄ちゃんあそこにウサギに風船」  子供というのは起きてからの覚醒が早い。もう自分の興味があるものを指さして、キャッキャッと暴れだす。アニーを下ろしてやると、すぐにウサギの風船の元に走り出した。  道を横断する時は、確認してからじゃないと危ないぞ、と注意を促そうと思ったその時、馬の蹄を擦る音と車輪音がした。嫌な感じがして横に顔を向けるとスピードを上げた馬車がこちらに走ってくる。御者台に座っている男も気づいて、慌てて紐を引いているが間に合いそうにない。
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