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アルバック家は山にある為、どうしても交通に関して疎い。家の近くなら自由に走り回っても危険は少ないが、町ではそうはいかない。危険が何倍、何十倍もある。だから常日頃兄弟姉妹に注意している。
「……ご、ごめん……なさい」
手の甲で涙をぬぐいながら、か細い声で謝る。ちょっときつく言い過ぎたかな。
足を折って目をアニーと同じ高さにもっていく。シリルは小さな頭に手を優しく乗せ、柔和な眼差しを向ける。
「もしアニーに何かあったら、お兄ちゃんもお姉ちゃんも悲しいだろ。だから、今度からはちゃんと周りを見てから渡るんだぞ」
「うん……わがった。……うわーん!」
泣き声を上げてアニーが胸に飛びついてくる。わかったならもいいよ、と柔らかい口調で言うとアニーを抱き上げた。
反対車線には、安堵した顔色を浮かべたエデとジルがいた。周りの民衆は、つかの間の出来事に理解できずに困惑している。シリルは、そんな彼らに頭を下げるとこちら横断してきた二人と足早にその場を去った。
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