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リリーが怒るのも無理がない。彼女の知らないところで、現国王である父上が勝手に縁談の話を進めていたのだ。
しかも、それを知ったのが今日の今朝の事である。
『リリー、お前ももう十八だ。そろそろ婿の一人でも見つけてもよかろう』
そんな甘ったるい声でリリーに告げられた。もちろん彼女は、自分の相手くらい自分で決めると主張したのだが、そんな反発を聞き入れる筈もなく即却下だ。
その内、優しい顔だった父上も憤りを見せ始めしまいには怒鳴られる始末だ。
『お前の縁談はもう決まったことだ。それにこの縁談は、お前にとってもこの国の民にとっても重要なものなんだぞ!』
彼女の縁談の相手というのは、大国フェーリアの王子だった。確かに、この国と強い絆で結ばれることになれば、大国エポストワールが更なる力を手にすることは明明白白である。
何より現在国境線に沿って起きている争いも一瞬片づくだろう。
去年からである。大国ヴァルカーンが貧困に悩まされ、少しずつ国の領土拡大を図って紛争を持ち込んできたのだ。そして、国境付近にある村を襲っては食物を食い漁っている。
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