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リリーと呼ばれた女性は、ルイに合わせてかぶっているフードを下ろした。そこから覗く顔にシリルは思わずゴクリとつばを飲み込んだ。
整った目鼻に黒くしっとりと濡れた瞳。加えて、自分自身の背中を隠してしまうほど長く、艶のある髪がふんわりとフードから舞い降りる。
何か言わなければと、あれこれ言葉を探しているうちにリリーが先に口を開く。
「こんばんわ、シリルさん。あなたの事はかねがねルイから聞いております。その腕を見込んでこの度あなたにお願いがあってまいりました。本当はこのようなこと我が兵に頼むのが筋なのですが、やむを得ない事情がありまして、ここに参らせて頂きました。では、ご説明を」
丁寧な前置きをした後、ルイに依頼内容を話すようにと目で合図する。はっ、と敬礼をすると、ルイが説明を始めた。
「この度、大変おめでたいことにリリーお嬢様が大国フェーリアの皇子と縁談なさられることが決定いたしました」
その言葉に続き周りにいた兵が一斉に拍手する。それをルイが制すると重ねて話す。こいつら実はバカなんじゃなかろうか。
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