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そこが問題なのではない。信用と信頼された者だけが敷居を跨ぐことが許される王国内に侵入されたことについてシリルは驚いていた。
「もしも、護衛の選ばれたメンバーの中にスパイがいたらリリーお嬢様に身の危険が及ぶ。ここまで言えばわかるだろ」
何も言わずに首肯する。そうでなければ皇女様自らこんな辺鄙な場所になどやってこないだろう。
つまり、皇女の護衛にシリルが付けということだった。
「本当は、こちらから何人かの兵を出したいのだがな」
珍しく申し訳なさそうな態でシリルに言うと、日後に控えている兵をルイが確認する。
そういえば、ここにいる兵は全員スパイではないと言い切れるのだろうか。ルイからの話を察するにまだ特定には至ってない感じだし。
聞こうかと思考したが、そんなこと聞くだけ野暮だと思って口を閉ざした。第一、信用できなければルイがこの場所に連れてくるわけがない。
「では、リリーお嬢様の護衛任務頼めるな」
「もともと俺には拒否権なんて存在しないんだろ」
まぁ、家族のためだし、どんなに無茶な任務でも元から断る気なんてさらさらないけど。シリルは振り返って、我が家を見つめる。
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