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「何を言っておるか、これはリリーお嬢様にとって大切な荷物なのだぞ」
横からヤジが飛んでくるが、それを黙殺して彼女に早くするようにと手でジェスチャーする。
「これは必要なの」
「そんなのを持っていたら素早く動けないじゃないですか」
「いえ、譲れません」
終始リルのヤジが挟み込んでくるが、完全に無視してシリルとリリーが口論を繰り広げる。周りの兵士は、ジッと動かない。もしかしたら、シリルと同じことを考えていたのかもしれない。
「じゃあ、そこには何が入っているんですか?」
あくまでもお嬢様と雇われ主という関係なので語尾は柔らかくすることを忘れない。
「それは……三泊四日分の服、食糧、それに寝袋、化粧道具……」
「ちょっと待ってください」
え? 今から旅行するのですか? と聞きたくなるくらいの持ち物である。そろそろ堪忍袋キレそうで、シリルは自分に何度も落ち着けと言い聞かせる。
「その中身を確認してもいいですか?」
「良い訳がなかろう! その中にはリリーお嬢様のパン……痛い!」
顔を真っ赤にしたリリーが威勢よくごちゃごちゃ言っているリルの頭をしばいた。
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