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「お前を殺すようにと頼まれたからだ。それとも、殺意を抱かれるような生活を送っていた覚えがないとでも言うつもりか?」
「だ……誰がそんなことを頼んだんだ! そうだ、お前、何リエルで雇われているんだ。その倍額を支払ってやろう」
起き上がると、下卑た笑みで腰巾着から金貨を鷲掴みで取り出した。それをどうだと言わんばかりに差し出す。シリルは悲しそうな表情を男に向けて、首を横に振る。
「それは無理だ。俺はそいつと約束したんだよ」
そう言って、金色に光沢する首飾りを人差し指でつつく。男の頬から冷や汗が垂れるのが分かった。
それでも諦めようとしない男は、もう片方の手で金貨をさらに取り出す。
「そんなもの破ってしまえばいいだろう。この巾着には四十万リエル程しかないが、俺のアジトにくれば一千万リエルが眠っている。どうだ、俺に着かないか」
シリルは再度首を横に振る。その反応に驚愕の反応示した男は、持っていた金貨を投げ捨て、腰に巻かれていた短刀をシリルに向けた。
「クソがぁ! だったら、お前をここで殺してやる!」
魔法使いに短刀で戦おうなど、無謀にも程がある。一呼吸入れると、シリルは地面へと手をかざした。
「『天羽々斬剣(あめのはばきりのつるぎ)』」
洗練された無駄のない声が森閑とした森に響く。
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