第二話 そうして『彼女』は……

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「今日はここらで宿を探しましょう」  地図と自分がいる現在地を照らし合わせて言った。後ろを向くと、顔を見えないように深くフードをかぶったリリーがいる。 「そうですね。この辺りは治安もいいですし、ゆっくりと眠るにはベストな場所ではないのでしょうか」  『イルロン』それがこの町の名前ある。場所で言えば大国エポストワールの南西側に位置している。道に沿って出店やら移動様式の屋台が広がっている。皆、退勤してひと段落といった表情で、おっさんたちが楽しそうに飲んだくれている。 「もしかしてですけど、この地図をリリーお嬢様は見ていないのですか?」 「しっ! このような場所でお嬢様と呼ばないで下さい。ばれてしまうじゃないですか」  耳を自分の場所まで引っ張られると、周りには聞こえない声でささやかれる。 「すみません、どうしても気になってしまったので」 「まあ、誰にも気づかれなかったようなので良かったですが……。これからは、私の事をリリーと呼んでください。名前自体は平凡ですから、誰も皇女だなんてきっと分からないでしょ」
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