第二話 そうして『彼女』は……

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「どうしてと言われましても……」 「取りあえず着替えて下さい。それではローブが羽織れないでしょ」 「そういうことなら大丈夫です」  自信ありげにリリーが胸を張って持ち出して来たのは、仮面舞踏会で使われる蝶のマスクだった。どこが大丈夫なのだろうか? シリルは泣きたくなるのを堪えて、はっきりと告げる。 「それでもダメです。顔を隠してもドレスで分かってしまいます。お願いですからローブが着用できるような格好になって下さい」 「う、うう……分かりました。けど、昨日の服は洗濯していないので、新しい服を買って下さいまし」 「まあ、それくらいなら。それまでは、昨日の服を着てください。後、ローブはこちらを」  不承不承に許しを出して、シリルが昨夜羽織っていたローブを渡した。 「どうしてこれを? 私が持っている方が、汚れてないのでそちらが良いのですが」  全く丁寧にもやんわりとも断れてねえ。心が痛いんだけど。この嬢様、自分が仰っている酷さ理解しているのか。してないだろうな。 「このローブはですね『無傷の羽衣』と言いまして、アクセサリーの一種です。これ自体にもともと魔力が籠っているので、もし俺とはぐれるようなことがあっても、そのローブがリリーお嬢様を守ってくれることでしょう」  無傷の羽衣は、大型魔法の一つや二つ余裕で防ぐことができる。念には念を入れておかなければ、この先どんなことがあるか分からないからな。
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