第二話 そうして『彼女』は……

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****  そんな二人の姿を見て舌打ちをする男がいた。そして、その男の背後には数人の付き人が。 「早く国を出ればよいものを」  男の苛立ちは、周りにいる付き人にまで伝染するほどであった。誰もが男から視線をそらして、地面へと目を向ける。 「兎に角、お前らあいつらの後を追うぞ」  野太い声に「はっ!」と応答した。  歩き出した男たちは、あっという間に一般市民に溶け込んでいった。 **** 「これなんてどうでしょうか?」  フードの中から彼女の嬉々した顔がのぞく。こじんまりした小さな店なのに、お嬢様が喜ぶような場所ではないのに、何故か彼女は笑みをこぼしていた。それほどまで彼女には自由がなかったのだろうか。まあ、女子は服選びが好きそうだしな。  そんなことを考えながら、兄弟姉妹で服屋に来たことを思い出す。  ジルは常に興味なさそうにさっさと服を決めてしまうのだが、エデは長い。加えてアニーの服選びにまで熟考するのでさらに長い。だから、いつもシリルとジルは先に買い物を終えて、露店に売っている物を食べて待っている。 「なかなか似合っていますよ」 「じゃあ、これはどうです?」  掛けてある新たな服を手に取ると、リリーは自分の体に合わせてまた同じことを聞いてくる。 「とってもいいと思いますよ」 「そうですか。なら、次はこれ」  こっちが褒めたはずの服を元の位置に戻すと、三度違った種類の服をこちらに見せる。 「……いいんじゃないですか」 「もう、シリルさんそればっかり」 「すみません」  反論しようかと思ったが、エデにも以前に同じように言われたのを思い出した。
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