第二話 そうして『彼女』は……

11/17

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
『女性の服選びに付き合えないようじゃ、嫌われちゃうよ。服は女性にとって大事なステータスなんだから』  あの後、結局、ジルと一時間ほど待ちぼうけをくらった。絶対忘れない。 「そうだ。よかったらシリルさんが私の服を選んでくださいよ」 「え、ええ! 俺が決めるのですか?」 「はい」  屈託のない顔でさらっとすごいことを言い出す。女性の感性なんて自分には到底わからない。まして、シリルは、アニーの服さえ選んであげたことがない。そんなシリルが、皇女の服なんて恐れ多いどころではない。 「無理です。そんな、俺には」 「いいから選んでくださいよ。嫌だったらちゃんと嫌だって言いますから」  それもそれで傷つくのだけど。こういう時は店主に助けてもらうしかない。レジの前で新聞を読んでいる男に声を掛けようとして、リリーに遮られる。 「シリルさんが選んでください」  にこり。怖い、その笑顔。はあ、どうしてこうなった。  肩を落とすと、シリルは仕方なくリリーに似合う服を選ぶことにした。  服を一枚一枚熟視して、取りあえず動きやすそうな服をベースにして探し出す。これから森の中を歩いていくので、それに配色合わせて緑にしよう。さすれば背景の色とマッチして誰かが襲ってきても逃げ切りやすい。けど、ローブを羽織っているからあまり意味がないか。しかし、用心することに越したことはないか。 「そういう訳で、緑の長袖ティシャツ(無地)」 「却下です。どうして、そこで戦闘が加わってくるのですか」  即答される。もう少し考えてくれてもいいと思うのだが。そうか、ダメか。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加