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得意の武器召喚魔術を発動させると、無秩序に生えている草の上に神々しい輝きを放つ円形が出現する。刹那、何もなかったその場所からは銀色の刃を持った刀が姿を現した。
天羽々斬剣を抜き取ると、柄を両手でしっかりと握りしめる。そして、刀の切っ先を男へ向けた。
「な、何をするのかと思ったら、武器を出すだけかよ」
攻撃魔法ではなく召喚魔法を使用したことに心底安心した男は、薄笑いする。じりじりとシリルとの合間を詰め、男は相手が油断した一瞬を狙おうと姿勢を低く保つ。だが、彼にとって、この男など何の脅威でもなかった。元より、この刀を召喚した時点で勝負は決まっているのだ。
そしてもう一つ、シリルと相手の間には圧倒的な武具の差があった。
「なあ、最後にもう一度だけ聞いてやる。本当に俺に雇われる気はねえか?」
「しつこい。俺はもう、依頼人と約束しているんだよ。お前を殺すとな。それに貴様のしたことは決して許されることではない。どの道裁かれる運命なんだよ」
そんな話などに丸きし興味などない男は、そうかよと吐き捨てた。
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