第二話 そうして『彼女』は……

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 さてと、ちょっと外回りに向かいますか。  シリル自信、魔力を感じ取る力はほとんど存在しない。だから、今感じ取れた魔力保有者――つまり、魔法使いは、そんなシリルが感じ取れるほどの魔力の持ち主だということだ。  ごめん。カーテンの向こう側にいるリリーに聞こえない声で謝ると、踵を返して外へ出た。  重たいザックを下ろすと、急いで店を飛び出す。周辺を見回すが、さっきの強い魔力を放ちそうな人はいない。常に手を地面と平行にして、いつでも剣を出す準備をする。 「いないのか?」  こっちの動きに気付いて隠れたのかもしれない。しかし、あの魔力は半端じゃなかった。シリルと同等、いやそれ以上かもしれない。 「きゃぁあ!」  先ほどまでいた服屋から悲鳴が上がる。その甲高い声は明らかにリリーのものである。  しまった。まさか、あいつが。そう考えた時には、すでに遅かった。  中に入ると、数人の男がリリーを襲っていた。そのうちの一人がリリーの首元にナイフを当てている。着替えている途中だったのか、下着姿のままである。 「おい! 何してる!」 「何って……見てればわかるだろ。こんな上玉がこんな場所に出向いて下さるとは、感激の極みだ」  下世話な笑みを浮かべて、リリーの頬をなめた。彼女は今にも泣きだしそうな顔で、男のそれから必死で逃げようとする。  しかし、あの強い魔力を放った者がいないとなるとどこかで高みの見物をしているのか、それとも実はただの通りすがりだったのか。一番最悪なパターンは、魔力の放出量を自らで調節できることである。
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