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くそ。しっかりと彼女の傍に俺が付いていたら、こんなことにはならなかったのに。シリルは歯を食いしばると、真っ直ぐに男たちを睨みつける。しかし、いつまでもこうして立っているだけでは、埒が明かない。
下に手をかざして、シリルはゆっくりと呼吸する。そこで初めて金色だったはずの首輪が黒くなり始めていることに気が付く。早くしないと、奴らは本当にリリーに危害を加える気だ。
「『天羽々斬剣』」
手の真下に紋章が浮かび上がる。そして、そこからゆっくりと姿を現したのは、異彩を放つ刀だった。シリルは身体を低く構えると、先ほどから使用している魔法『木剋土』をさらに強くする。
「なあ、その女性を放す気はないか?」
「女性? 何の御冗談を。こいつはお姫様だろ。こいつさえ使えば金がいくら……」
「もういい。黙れ」
リリーは、その瞬間を垣間見た。それはとても悲しそうな表情をしたシリル。
「分かっているのか、貴様。こっちには人質がいるのだぞ」
「それがどうした。どうせ、その方が死ねば俺も死ぬ」
先ほどまでとは全く変わった声音で男たちに言い返す。リリーは思わず身震いを覚えた。なんて冷たい目なのだろう。
近くにあったハンガーを吊るしている金属の細い棒に触れると、魔法の言葉を唱える。
「『金生水(きんじょうすい)』」
すとんと掛かっていた服が金属の棒をすり抜けて床へと落下する。否、それはもう金属のアトリビュートである光沢などはなく、淡い透き通った水へと属性変化をしていた。
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