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「そう言えば、一つお前らに質問がある」
男たちは声のする後方に振り返ると、真っ赤な鮮血を浴びたシリルがリリーを抱え立っていた。彼は、まるで、ガラスのコップを置くかのようにリリーを試着室へ下ろす。
既に首輪は、金色に戻っている。
「いつも間に私の後ろに――がっ!」
「最後まで話を聞け」
言葉を発した男の腹には、剣が深々と突き刺さる。それは、一瞬の出来事であった。
「……で、質問があるんだが、一体誰に指示された?」
リリーに見せていたものとは全く別物の、冷たく鋭い視線で唖然とする男たちを見回す。シリルは、肉を引き裂く感触と共に、剣を引き抜いた。息を詰まらせ上手く声を出せないその男は、人形のようにぱったりと倒れて動かなくなった。
「ひっ! 実は俺たちも名前は知らないんだ! ホントだぜ!」
周囲にいた男の一人が早口に答える。
「嘘だったら殺すぞ」
「嘘じゃないって。ホントなんだ」
化け物でも見たような顔をしてやがる。お前らのしてきたことの方が化け物じみているはずなのに。口の中で毒づくと、襲ってきた男たちに言った。
「もう二度と俺らに関わるな。いいな!」
「わかった。もう二度とお前らには関わらねえ……」
約束すると、傷を負った男を抱えて、男たちは店内を出て行った。
「もう目を開けてもいいですよ、リリーお嬢様」
試着室には、困惑な表情を浮かべたリリーが壁にもたれかかっている。無理もなかった。普段は、お城に閉じこもっているので、外の世界との接点が薄い。だから、こういう経験には疎いのだ。
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