第三話 『彼女』に俺は打ち明ける

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 会話がない中、巨大な門『オールン門』にたどり着く。  今から、大国エポストワールをから出る。そこから先は、暫く無法地帯だ。  国境と国境の境目は、意外にも広く所々に村が点在しており、金目の物を狙う盗賊などが住んでいる。なので、めったなことがない限り誰もオールン門から出ようとしない。故に、オールン門の前に兵士が三人しか存在しない。出国の際は、軽いボディーチェックが入るが、魔法を使うため数秒で終わる。  リリーとシリルの二人は、ボディーチェックを受けると、相手がこの国のお嬢様だとも知らないで、簡単に無法地帯へと足を踏み入れることができた。 「もう、フードは外していいですよ。ただし、ローブは着たままで」  何のレスポンスもしないで、リリーはフードを下ろした。綺麗な青髪がふわりと露になる。  周囲には、手入れされていない草木が生えているだけで、人の気配はしない。やっと一安心できる。シリルは胸を撫で下ろした。  あとは、このギスギスした関係がどうにかなればいいのだが、不安で顔を曇らせるリリーを見てそう思った。  しかし、まさかここまで温室育ちだとは考えていなかった。  国を統制しているからこそ、常に争い事は耳にしているはずだ。だいだい今回の任務もそれが原因のはずである。それなのに、この嫌われよう。  こうなったのは、もとはと言えばお前らの所為なのに。けど、これから三時間以上歩き回るので、会話なしなのは辛い。あと、ザックが重たい。  そうなのである。一応、あの後に朝食と昼食のどちらも買ってこの中に詰め込んでいる。だが、人の死体を見た後では食欲が失せてしまったようで、いらないと断られてしまった。  つまり、無駄なものが増えた。
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