第三話 『彼女』に俺は打ち明ける

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「少し、持ちましょうか」  思いだにしないことに、リリーから話しかけてくる。 「いえ、大丈夫です。これも任務の一つなので」 「……そうですか」  しまった。会話を繋げるチャンスだったのに。後悔の念に駆られつつ、何かないかと言葉を探す。 「あ、あの――」 「そのネックレス綺麗ですね」  シリルの言葉を遮り、彼女が金色の首輪を見据えて言った。 「そうですか? これはそんなにいいものじゃないですよ」 「はい。ルイとのやり取りでそれくらいは察しています。それはどういった魔法道具なのでしょうか?」  シリルは、その質問に口を噤んでしまった。  これは、ご主人様の手を噛まないようにするための、奴隷が嵌める魔法道具とは到底言えない。 「ただの魔力を増強させる首飾りだよ。任務前はいつもこれをルイさんに貸してもらっているんだ」  無理に笑顔を作り、適当な説明をする。 「嘘です」 「え?」 「私を誰だと思っているのですか。仮にも一国を束ねる王の娘ですよ。人の目を見れば、それが真か偽くらい見分けられます」  思わず歩調を止める。というよりは、彼女の真摯な瞳に魅入られ自然と足が止まってしまった。 「分かっているのです。私が世間の事を全く知らないことくらい。先ほどの争いも致し方ないってことも」  彼女は、無我夢中で心の中の異物を吐露していた。 「けど、それでも……争い事は嫌なのです。誰かが不幸になるのが、たまらなく嫌なのです」 「争いはなくならないよ」  火種はいつも君たち貴族だ。
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