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「だからこそ、少しでも国民の痛みを癒したいのです。理解したいのです」
泣いていた。また、リリーは泣いていた。彼女は、涙もろ過ぎる。
「お願いです。本当のことを教えてください。私は一つでも多くの真実を知りたいのです。いったい、その首輪は何なのですか?」
彼女の思いがビシビシと感じる。
やはり、リリーとは分かり合えない。この首輪の事を話せば、きっと彼女は泣くのだろう。
しかし、だから何だというのだ。国民の痛みを理解したところでどうなるというのだ。何も変わらない。リリーの言っていることは、都合のいい詭弁だ。
むしろ、痛みを理解されて憐みの視線を受ける方がよっぽど辛い。
「教えてください」
再度、リリーが問う。
「聞いても面白くないですよ。それに、リリーにはどうしようもないです」
「それでも構いません。知っておきたいのです。シリルさんの事を」
「分かりました」
諦めて、シリルは、真実を告げる。
「これは『誓いの首輪』です。何十年も前は、名誉ある称号――つまり貴族や兵士の中でも上級魔法使いのみが嵌められることを許された魔道具でした。しかし、昨今では少し意味合いが違います」
シリルは一旦、息継ぎを入れる。そして、自嘲気味に言った。
「それは、奴隷が嵌める道具として扱われているのです。特に、俺のような扱いやすい奴隷にね」
「……奴隷」
リリーは、自分が考えていた以上の返答が返ってきて驚いていた。別に、大国エポストワールに奴隷がいない、なんて絵空事を思い描いたことなどない。
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