プロローグ

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 この男――オーベル=アロワは、強盗の罪に掛けられている。貧しい民家に押し入っては、お金を窃盗しているのだ。今回の依頼は、襲われた民家からの依頼だった。  外道なこの男は、反抗したものは容赦なく腰に下げた短刀で攻撃する。依頼主はそれで嫁さんを失ったのだそうだ。  だが、シリルの取ってそんなことは実にどうでもいいことであった。彼にとって最も重要なことは、それに見合う分の報酬である。  これさえ手に入るのであれば、シリルはなんでもする。例え、人殺しをすることになろうとも。  お互いに緊迫状態の中、先に動いたのはシリルだった。男は一瞬、及び腰になるがすぐに低姿勢に戻り、迎え撃ってくる。  突き出された短刀がシリルの懐に潜り込む。それなのに、シリルはそんなことには目もくれようともしない。ただ、自分が握っている刀を振り下ろすことだけを考えていた。  キィィン! 金属同士が強くぶつかり合ったような音と、肉を裂く鈍い音が同じタイミングで荒野に響く。
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