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ただ、ルイが言っていたのだ。昨日の夜、城を出る前に。
『彼は、この国の優秀な兵士なので安全に大国フェーリアへと行けます』
と。だが、そんな彼は自分が奴隷だと決然と述べた。
「ね、面白くもなんともないでしょ」
それも、自分を馬鹿にしたような言い方で。それが、リリーには堪らなく嫌だった。
「どうして! どうして笑っているのですか! 貴方は、国の犬として扱われているということですよ! それなのに……」
何で、そんな顔ができるのですか! そう紡ごうとして、彼女は自らの言葉を断ち切った。
言える訳がなかった。だって、そうさせているのは、自分たち王家じゃないか。それなのに、これ以上彼を苦しめるような言葉を吐くなんて。
嘘をついていたルイだって、ただ私を困らせないために兵士と偽ったに違いない。
リリーは思い知らされた。
私は、守られ過ぎている、と。
「確かに、犬のように扱われているのかもしれない」
柔らかい語調でシリルが、話し始める。リリーは、その声に下げていた顔を上へと上げる。
「けど、俺には家族が居る。あいつらを養うには、金が必要なんだよ。だから、俺は、例え国の犬になろうが、金さえ貰えればなんだってするさ」
焼き付いた脳内フィルターで兄弟姉妹を順々にシリルは思い返す。
「俺は、家族の笑顔が好きだからな」
リリーは口を一文字に結ぶ。私には、何も言う権利がない、そう悟ったからだ。
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