第三話 『彼女』に俺は打ち明ける

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「どれくらい来たのでしょうか?」 「半分くらいだと思います。何せ、ここは標識がないので正確な位置が分からなくて」 「そうですか……まだ半分ですか」  だいぶ疲労が溜まっているのだろう。リリーの顔色が少し悪い。果たして時間通りに間に合うのだろうか、とシリルは少し心配する。 「あのう、一つ提案なのですが、ここらで巨大ザックをどうにかいませんか」  賊などに襲われたときに、こんなにでかい荷物を持っていたのでは、動きが鈍る。何より街中で出会った男が気になる。 「ですが、そこには、大切なものが」 「いや、別に捨てろと言っているわけではないのです。ここに隠しておくのです。後で俺が取りに行きますから」  食い下がるリリーに、さらに詰め寄る。そうしないと、シリルの魔力が途方もないほど奪われ続けるからだ。 「……分かりました。それなら少し待っといて下さい」  丸太から降りると、ザックのチャックを開ける。それを横目でシリルが見ていると、羞恥心たっぷりの顔でこちらを睨んでくる。 「少し、あっちを向いといてください。色々あるので」  頭を掻いて、シリルは仕方なくそっぽを向いた。 「シリルさんって学校に通っているんですか? 見たとこ学生っぽいですけど」  沈黙を嫌がって、リリーが唐突に問いかけてくる。 「さっきも言ったように、奴隷には通える権限なんてありませんよ」 「そうですか」  そう言うと、リリーが黙ってしまう。  嫌な空気にしてしまったとシリルは思い、慌てて話題転換する。
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