第三話 『彼女』に俺は打ち明ける

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「村に入る前に、魔法解きますね。体が重たくあると思いますけど、もう宿に着くので我慢してください」 「はい。魔法、ありがとうございました」  律儀だなあ、と思いつつ魔法を解いた。同時に、リリーの体が重力で地面に吸い寄せられ、態勢が低くなる。だが、それも一瞬のこと、すぐに立て戻す。  村の入り口と思しき場所には、門番である二人の村人が立っていた。 「すみません。今晩ここで宿を取りたいのですが」  シリルは、リリーを庇うようにして村人に近寄る。それに対し、しかめ面をした村人は、暫し二人を熟視する。 「おめーら、どっから来た?」 「大国エポストワールです」 「本当か? 通行許可書を見せろ」  通行許可書とは、出国及び帰国する時に貰える紙の事である。  それなら確か、とシリルはザックを下ろして中身をおっぴろげる。だがどこにもない。  そのシリルの慌てぶりにリリーの顔が真っ青になっていく。いや、まさかと頭に手を当てて記憶の糸を辿る。そして、リリーはある結論にたどり着く。 「シリルさん。私、置いて来ちゃいました」 「え……、もしかしてザックの中を整理した時ですか?」 「はい、もういらないと思って」  泣きそうな顔でリリーがそう訴える。というか、少し泣いていた。  ここからあの場所まで、どれだけ飛ばしても三十分近くかかる。その間、リリーを一人にしてしまう。流石にそれは出来ない。 「どうしても通行許可書が必要ですか?」  良い返事が返ってくることを懇願して訊ねる。
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