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「ありました。ここに」
首の後ろを指さして、リリーが言った。シリルは、手を回して、さされた場所を手でなぞると、そこか何か掘られたようにくぼんでいる。
「あの、これを見てください。ここに王国の名前が」
「どれどれ」
村人は彼女の言われるままに従って、シリルの首の後ろを見る。すると、そこには、何か文字が掘られてあった。
『ここに大国エポストワールの兵と認める』
まさしくそれは、エポストワールから来たことを示していた。
「確かに、大国エポストワールの者ですね」
「それじゃあ、これで中に入れますか?」
「そうだね。あの国なら入れてもいいかねえ」
リリーの質問に、村人二人が顔を見合わせて渋々頷く。彼らは、村の入り口を開けると、すんなり中に通してくれる。
「良かったですね、入れて」
「そうですけど。でもこれからは、何をするのか説明してから行動してくださいよ」
村の中に入れたことに興奮するリリーを窘める。いきなり首輪を引っ張られたものだから、首が鞭打って少し痛い。
「すみません。つい、シリルさんの助けになれると思ったら嬉しくって」
しょんぼりとして顔を伏せる。そこまで怒ってないんだけどなあ、シリルは気まずくなりリリーから顔を背ける。
しかし、リリーの考えは実に妙案であった。昔、この首輪は、王に使える者の証として使われていたのだ。どこかにそのことを示す文字が掘られてもおかしくないとリリーはそう考えたのだろう。
そのことについては、シリルは感謝しなければならなかった。
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