10人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ
ドタバタと慌ただしい音でシリルは目を覚ました。昨日の疲れが残っている所為で、体が重たい。
「シリル兄ちゃん、ジル兄ちゃんがアニーの目玉焼き食べちゃったよぉ~」
勢いよく扉が開いたと思ったら、アニーが目元に涙を浮かべて飛びついてきた。その後ろから、次男のジルと長女のエデが入ってくる。
事情が呑み込めていないシリルであったが、取りあえずバランスよく結ばれたポニーテイルの頭を撫でてやる。たぶん、エデがやったのだろう。
長男のシリルと長女のエデはどちらとも黒髪であったが、次女のアニーと次男のジルは金髪であった。
「こら、ジル。お兄ちゃんがアニーを苛めちゃだめだろうが」
アニーはまだ五歳、それに比べてジルは十歳と五歳も年上である。
「だって、アニーがいつまでたっても食べないからてっきりいらないのかと思って」
「違うの! アニーは好きなものは最後に食べたいの!」
頬っぺたを膨らましてアニーはジルを涙目で睨んだ。なんだよ、とジルも見つめ返す。一触即発だ。
最初のコメントを投稿しよう!