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「ジルもアニーもいい加減にしなさい! シリル兄ちゃんは仕事帰りで疲れているのよ!」
一括りに結われた腰まで伸びる長髪を揺らして、エデはジルの頭を叩く。これが更なるケンカの元なんだけどなあ、とシリルは思ったが決して口にはしなかった。
エデは、十四歳とシリルより四歳年下である。当然、力でジルが勝てるわけがない。
「いってぇ~。何するんだよ、クソばばぁ!」
「なんですって! よくもいったわね!」
綺麗に生えている金髪を抑えながら、エデに怒りの眼差しを向ける。
そして、新しいケンカが生まれる。エデまで初めてどうするんだよ。
もう見てられなかったので、シリルはしがみついているアニーを宥めることに専念することにした。
*****
大国エポストワールの中心都市『グロッシア』。その町はずれの場所にアルバック家は在籍している。山籠もりをしているといっても過言ではない程に、アルバック家の周りには木々と川しかない。
このような状況になったのはある一つの事件が引き金となっていた。その所為で父と母を失い、今はシリルが家計を支えている。家事はエデがこなし、その間アニーの面倒をジルが見ている。
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