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ある日、その主人様は、私にこう言いました。
「私ももう長くはない。
実は重い病気が見つかったんだ。
だから、私の死ぬ瞬間を、街のみんなに聞かせてやってくれ。」
私はとても悲しくなりました。主人様をどうにかしたいと思いました。でも、私には何もできない。
ただ、彼の死に行く瞬間を歌う事しか。
そして、ある日主人様は死にました。
幸い私には涙を流す為の目は持っていませんでした。其れゆえ、街の皆さんや主人様に涙を見せる事はありませんでした。
私はいつも通りの表情で彼の生命の灯火が消える瞬間を歌いました。其れはとても悲しく、残酷な歌。気受けが良かった主人様の死を私を含む誰もが悲しみました。
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