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「別に、じゃないでしょ?
やっと自分の気持ちに気付き始めた頃に、そんなの見たら泣きたくもなるわよ。
カノ、散々泣いたんでしょう?」
そう言って目元を指差しながら指摘すると、カノはこれまた子どもみたいに目をごしごしと乱暴に擦りながら下を見据えた。
泣きまくったのであろうカノの目は、赤く腫れていて如何にも痛そうだ。
それでもやけくそのように擦っているカノの背中を撫で、ただ側に寄り添う。
そうでもしないと、この娘、泣いちゃいそうな目をしていたんだもん。
親友として、支えになってあげるのは当然よ。
そんなことを考えていると、その原因でもある人物が現れた。
「……それじゃあ、隠しようがなさそうだな」
「っ!?」
ガタタッ、とあからさまに動揺しているような音を立てているカノは、声の主である真野をおどおどしながら見上げていた。
一方で真野は、合点がいかなそうな不思議で堪らないといった顔でカノを眺めている。
誰の所為でこんなことになってるのか解ってんの、と言ってやりたいのは山々だけど。
カノの為にも、其処までのお節介は出来ない。
そんなカノのひどい泣き顔に、真野も眉を寄せて怪訝そうな顔をしていた。
「大丈夫なのか…―――ってレベルを超してるな。
やっぱり、俺が何かしたのか」
その一言に、思わずカチンときてしまった。
込み上げる苛立ちを抑え切れずに、あたしの口から刺々しい言葉が飛び出す。
「なに、自覚はあったってこと?
だったらあんたは最低な男ね、真野」
「……だから、何のことなんだ。
それがずっと解らないから、こうして直接聞いてるんだろうが。
佐久間(さくま)さんも心配してたし、その原因が俺にあるのは確実だとか言われて仕事増やされるし……」
溜め息を吐きながらもカノを心配するみたいに見つめている真野に、カノは何も言わず俯くばかりだった。
今にも泣きそうな瞳を足元に向けているのを見ていると、あたしまで何だか涙が込み上げてきてしまう。
すると、聞き慣れたうざったい声が耳に飛び込んできた。
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