第1話

2/2
前へ
/2ページ
次へ
 こんな話がある。  日本海に程近いまばらに立った住宅街。古い日本家屋の閉ざされた一室に一枚の鏡が置かれている。そして、 「真夜中にその鏡の前へ立ってはいけない。怪異に出会うから」  と、言い伝えられている。  勇敢な自分を見せたい年頃だろう大学生がその家屋に浸入して件の鏡の前に立った。  何のことはない。ただ自分の姿がぼうっと映っているだけだ。  翌日。自慢げにその話を仲間に吹聴している時だった。  同じ大学の先輩がやってきて、 「馬鹿な自慢をしてるんじゃない。その鏡はとっくに割れているぞ。嘘だと思うなら後で確かめてみろ」  大学生の顔は青ざめた。    
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加