01:テストプレイヤー

4/8
前へ
/8ページ
次へ
「このあたりのはずだけど……」  燈が足を止め、周りのビルを見渡そうとしたとき、ふいに背後から声をかけられた。 「あの……」 「え! はい?」  慌てて振り返ると、声をかけてきたのは十代半ばの少女だった。少し跳ねたショートカットの似合う小柄な女の子だ。 「えっと、その……ちょっと教えてもらえますか? あの……ここに行きたいんですけど……わかります?」  そう言って彼女が差し出したのは、燈のものと同じ案内状の地図だった。 「え、そこ? えっと……もしかして『ダイブイン・システム』に招待された?」 「え? あ、はい。そーです。あの……あなたも?」 「うん、そう。俺もそこに行く途中」 「やたっ! 助かった。実は私、二十分ぐらいこの辺りで迷ってて……」 「そ、そんなに? じゃあ一緒に……っていうか、もうこのあたりのはずだけど……」  燈の言ったとおり、目的のビルはわずか十数メートル先だった。だが、表通りから一歩路地に入っていたため、気をつけていないと見逃してしまっても不思議はない。 「ほんと、わっかりづらいとこだなー」 「良かったぁ。一人だったら、また素通りするとこだった」 「ちょっと急ごう。もう、あんまり時間無いし」
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加