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「このあたりのはずだけど……」
燈が足を止め、周りのビルを見渡そうとしたとき、ふいに背後から声をかけられた。
「あの……」
「え! はい?」
慌てて振り返ると、声をかけてきたのは十代半ばの少女だった。少し跳ねたショートカットの似合う小柄な女の子だ。
「えっと、その……ちょっと教えてもらえますか? あの……ここに行きたいんですけど……わかります?」
そう言って彼女が差し出したのは、燈のものと同じ案内状の地図だった。
「え、そこ? えっと……もしかして『ダイブイン・システム』に招待された?」
「え? あ、はい。そーです。あの……あなたも?」
「うん、そう。俺もそこに行く途中」
「やたっ! 助かった。実は私、二十分ぐらいこの辺りで迷ってて……」
「そ、そんなに? じゃあ一緒に……っていうか、もうこのあたりのはずだけど……」
燈の言ったとおり、目的のビルはわずか十数メートル先だった。だが、表通りから一歩路地に入っていたため、気をつけていないと見逃してしまっても不思議はない。
「ほんと、わっかりづらいとこだなー」
「良かったぁ。一人だったら、また素通りするとこだった」
「ちょっと急ごう。もう、あんまり時間無いし」
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