1人が本棚に入れています
本棚に追加
そこは最新鋭のゲームを開発する会社がオフィスを構えるビルにしては少々古臭く、雑居ビルといったほうが似合いそうな建物だった。休日ということもあってか一階は無人だったが、エレベーターは稼働していた。エレベーターの横の案内板によるとダイブイン・システムのオフィスがある十三階はビルの最上階だ。
「うわー、シーンとしてる。誰もいないから、ちょっと不気味ー」
「だね。なんか薄暗いし……でも、エレベーターが動いてて良かった」
二人が十三階でエレベーターを降りると、目の前がダイブイン・システムの受付だった。受付の女性に案内状を提示すると入場許可証を渡され、少し奥の『ミーティングルーム』と書かれた部屋に行くように指示された。ミーティングルームは正面に70~80インチほどの電子黒板が設置された学校の教室を少し狭くしたぐらいの広さの部屋で、電子黒板に向かって長いテーブルが横に二つ、それが二列で計四つ並んでいた。各テーブルには、それぞれA~Dのアルファベットが書かれた札が立てられていて、用意された四人分づつの席は、すでにほとんど埋まっていた。
ミーティングルームに入った燈たちが気を引かれのは、部屋の後ろのほうに四つ並んだ体感ゲーム筐体ぐらいの黒っぽい無地のボックスだった。各ボックスには黒みがかかった透過性のドアがついているが、ボックス内が暗いので様子はわからない。
二人が謎のボックスに気をとられていると、ドアのすぐ横にいた案内役の若い男性から、案内状に書かれたグループ番号の席に着くようにと指示された。
「私は……んっと『A1』」
「俺は、えーと……『A2』だ」
「じゃあ、おんなじテーブルだ。ほら、一番奥のテーブルが『A』だよ」
「あ、ほんとだ」
最初のコメントを投稿しよう!