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持ってきた風呂敷を広げると、百入茶(ももしおちゃ)に雪持ち竹文の着物が出てきた。冬が近いのだと嫌でも思わされる。
一瞬にして着替えを済ませたイヨズヒコ。イヨズヒメは袍と単と大口袴を畳んで、風呂敷で包む。
「……もうすぐ新年ね。次の年はどんな現人と縁があるのかしら」
心を見透かしたかのような、それでいて何気ない妻の言葉。
「さあな」
素っ気なく応じる以外に、できることはない。
「次はこれまで通り、また縁結びの一組のお守りに分霊されましょうよ」
「断る」
「あらどうして」
「リア充はもう見飽きた」
この家では早苗がいないと、酒も思うように飲めない。
今日は月次祭に霜月神御衣祭。必ず神酒があるはず、と一旦神社へ戻ることにしたイヨズヒコだった。
神酒よりも、早苗の出す酒のほうが口に合うようになってしまったことに、彼の神は間もなく気が付くこととなる。
* * *
「ただいまー」
金曜は六時間授業。いつもより少し早く帰宅した早苗は、玄関先にどっかと胡座を掻くイヨズヒコを見てぎょっとした。
「やっと帰ってきたか」
「ど、どうかなさったんですか?」
「酒。それと酒菜(さかな)」
ぼそっと言って立ち上がると、先に二階へと行ってしまった。
慌てて手洗いうがいを済ませ、台所の床下収納から一升瓶を取り出して、自室へと駆け上がる。襖を開けて、まずは窓を開け布団を仕舞い、座布団を出した。
「酒器とお摘みもすぐにお持ちします!」
今日の酒は山丹正宗特別純米酒。自分で飲むわけでもないのに、早苗は日本酒の銘柄に詳しくなり始めている。
肴は白菜と油揚げの煮浸し。家長の今夜の肴でもある。
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