79人が本棚に入れています
本棚に追加
/725ページ
全ての窓に鍵がかかっていることを確かめてから、階下におりる。
「お母さん、ちゃんと鍵かかってたよ」
「ありがとう。お父さんたちは大丈夫かしら」
ややあって、男衆がぞろぞろと戻ってきた。
「お帰りなさい、どうだった?」
「付近に怪しい人はいなかったが……交番には届けてきた。巡回を強化してくれるそうだ」
ヘルメットを脱ぎながら、早苗の父はふうっと安堵の溜め息をもらす。
「お正月から物騒ねえ……気をつけるのよ、早苗」
「うん。ありがとう、お父さん。皆さん、お騒がせして本当にすみません」
親類たちに、早苗は深々と頭を下げる。
「いいんだよ。何もなくてよかったね、早苗ちゃん」
顔を上げた早苗は、度肝を抜かれた。
親類に交じって、先ほどの着物の男性が玄関に立っているではないか。
「おお寒い。すっかり冷えてしまった」
「これはあったまり直さないといかんな」
全く意に介さず客間へ戻っていく男衆。早苗の母親が気を利かせて熱燗を用意していたらしい。歓声が上がる。
「えっ!? ちょ、何で!?」
―――どうしてみんな気がつかないの!?
「おっと」
客間に転げ込もうとした早苗を、男性は捕まえて抱きかかえ、口を手で塞ぐ。
「しーっ。騒がないほうが、あんたのためだ」
動きも声も封じられて、早苗はすーっと血の気が引いていくのを感じた。膝が抜けて、廊下に座り込んでしまう。
「あっ……あなたは……何者?」
口を押さえている男性の大きな手をずらし、身震いしながら尋ねた。
「俺? さっきも言ったじゃん。神様だって」
そう答えて、男性はにいっと笑った。
―――――To be continued...
最初のコメントを投稿しよう!